domingo
ここはサン セバスティアン。
さっきまで雪、雨が降っていたようで、傘を持って歩く人が多い。今は雨あがりの青空がわたしを向かえてくれたようだ。
今こうしてPCを前にし、自分のお城でようやくくつろいでいる。ここに至まで、数々の難問を乗り越えてきた。
まずその1。
西荻の自宅にあるものを処分し、アパートを引き払い残りの荷物を豊橋にある実家に運ぶという作業。誰が運ぶのかというと、それば自分。高速を一人で走るしか方法はない。私がここ何年も車を運転していないことは関係なしに、隣の車線では大型のトラックが150キロでぐんぐん飛ばしている。富士山を横目で追いつつも、西日で前方がどうなってるのか分からない。風が強くてハンドルはとられ、しかも汗でクチョグチョになって気持ち悪い。こんな調子でひたすら80キロで5時間。
その2。
成田からモスクワ→マドリー。マドリー到着時間は10時半。ホテルの予約ができなかったため、親友の強い勧めで空港で野宿することに決めたが、機内で話をした日本人男子から身の毛がよだつ怖い情報を聞いた。
「首を閉め、気絶させる」
ここは初めて足を踏み入れるスペインのマドリー空港。日本人らしき人間も見当たらない。タクシーの運ちゃんが「ニホンジン?オテルは?」としきりに声をかけてくる。重ねる両手にまたまた汗を握る。ココニイル ニンゲンハ、スベテ ジブンノ テキ。「ノ、グラシアス!」と氷点下ほどのまなざし(たぶん)を送る。いろんな外人が目の前を横切っていくが、みんなわたしのへんな格好を眺めている。インド製のショッキングピンクのストールを頭から巻き、サングラスをかけているわたし。変なファッションをした方が、こういう時は変な人間はよってこないかもしれない、わたしと親友の作戦である。
そんな格好で8時間を寒い真夜中をうとうとしながら過ごした後、バスで6時間、ここサン セバスティアンにやってきた。